manaby(マナビー)が創業まもない頃から大事にしているダイアローグ。その学びをシェアするオンラインイベント、第4回となるmanaby TALK!が先日開催されました。
参考:前編はこちら「コミュニケーションを生む事業所、自然なダイアローグ―manaby TALK!より」
今回は、manaby TALK!で事例を発表したもう一つの事業所、manaby 大阪梅田事業所の中村さん、天津さんにお話しを伺いました。
大阪梅田事業所は、2022年3月に開所。就労移行支援事業所のスタッフは、就職を支援するという側面から、福祉専門職の経験者だけでなくそれぞれの業務分野の専門職スタッフもおり、異業種から就労移行支援員になるということも少なくありません。開所まもない大阪梅田事業所でも、クルーさんとの面談にプレッシャーを感じるスタッフの姿が見られました。
※マナビーでは利用者のことをクルー、crewと呼んでいます。一緒に社会を変える仲間、という思いが込められています
「まずはお互いを知るために気軽に話す機会をつくりたいと、他事業所でやっていたクルーさんとの雑談タイムを梅田でもやってみようと考えたんです」(事業所マネージャーの中村さん※2022年12月時点)
事業所オリジナルで始めたのは、スタッフとクルー1対1のダイアローグタイム。時間は30分間、テーマを決めて話しても取り留めのない雑談でもよく、お互いが想いや考えを伝えて、否定をせずに受け止めます。いきなりダイアローグ(対話)をしようというのではなく、まずは会話を重ねる中で信頼関係ができていくうちに対話になっていくだろうと考えたものでした。
このダイアローグタイムは「気軽に参加できて、気楽に話せる」と好評で、応募が殺到。定期的に行ううちにスタッフにも徐々に変化が表れました。
「ダイアローグタイムを初めたばかりの頃は、クルーさんの役に立ちたいという一心で『いいアドバイス』をしなければと身構えていたのが、徐々にうまく力が抜けたような感じです」(サービス管理責任者 天津さん)
人と人との対等な話し合いを体感し、支援者側がクルーさんに対して助言をしなければならないという思いが解けていきました。
マナビーが目指すのは、チーム支援です。大阪梅田事業所でも、支援員のそれぞれの個性や経験を活かして、クルーさんが自分らしい働き方を実現できるように応援していました。
「基本的にクルーさんごとに担当スタッフを決めていますが、担当だけが支援をするわけではありません。ダイアローグタイムは支援員みんなでランダムに対応しています」(中村さん)
「支援現場では異動に伴い担当が変わるということもありますが、クルーさんには対人関係に不安や恐怖を抱いている方も多く、関わる人が変わると話せないという方もいます。自分の考えを他者に話す実践的な練習になるといいなと考えて担当以外のスタッフとの関わりを積極的につくっています」(天津さん)
manaby TALK!で紹介したのも、ダイアローグをベースにチームで支援を行った事例でした。
いろいろな価値観を持つスタッフとダイアローグを重ねることにより、様々な角度からクルーさんの「素」の部分を知ることができた、と天津さんは言います。好きなもの、苦手なもの、趣味のこと、子供の頃の話…訓練だけでは見えなかった部分も大切にすることで、多角的な支援につながっていったそうです。
「ダイアローグタイムは担当以外のスタッフとのラポール形成にもつながり、ここは安心して話せる場所なんだと思ってもらえるようになってきました」と中村さんは続けました。
大阪梅田事業所では、近隣の関係機関を集めたダイアローグ勉強会も実施していました。事業所内だけでなく地域で連携したチーム支援を行うために、ダイアローグを活用しようという取り組みです。
「福祉サービスは、業務内容は違うけどみんな大概忙しいんですよね。利用者とそこまで対話する機会がない、時間がないという声もたくさん聞かれます。マナビーのダイアローグの実践を伝えると、驚かれることが多いですね」(天津さん)
マナビーのスタッフも日々の業務に追われて時間がない中、それでも自分らしさの探求に必要だという想いから実践してきたダイアローグ。ダイアローグってなんだろうというところから始めたスタッフも、回数や経験を重ねるうちに、よりよい連鎖が起こっていくことを実感しているようだと中村さんは感じています。
「大阪梅田事業所をモデルケースとして、地域全体でのチーム支援を全国に広めていきたいですね」(中村さん)
ダイアローグを通して所属や業務内容の違う支援者がフラットに関わり、同じ目線であろうとする。安心して想いを伝えられる場で、支援者だけでなく一緒に学ぶ仲間も含めていろいろな関わりが起こり、選択肢が広がっていく。大阪梅田事業所では、事業所を越えたチーム支援を目指していました。