「悔しいからこそ、やるんです」―そう語るのは、徳島県在住のIさん（40代）。かつて板前として働いていた彼は、過酷な労働環境で体調を崩し、透析治療が必要になりました。働き方を見直す中でmanabyと出会い、在宅ワークという新しい道を歩み始めます。未経験の事務職に挑戦しながらPCスキルを学び、今ではMOS資格も取得。家族の支えと自身の努力を糧に、前向きにキャリアを築いています。

板前からの転身。体調と向き合いながら見つけた新しい働き方

15歳で板前の道に入り、県外で5年間の修行を積んだIさん。自立した生活のため、調理の世界以外でも型枠大工として建設現場に立ったり、解体工事の資格を取得して重機を操作したりと、専門的な技術を身につけながら、がむしゃらに働いてきました。

その後、食品スーパーに就職し、精肉担当や主任バイヤーを務めるなど、職人としての人生を歩んできたIさん。目の前の仕事に一生懸命取り組む中で責任あるポジションを任されるようになりましたが、長時間労働が続き、体調を崩して透析治療が必要に。

治療に専念するため精肉の仕事を辞めた後も、かつてお世話になった料理長の店を手伝ったり、肉の知識を深めるために養豚場を訪れたりと、働くことへの情熱が消えることはありませんでした。

しかし、透析を続けながら従来の働き方を続けるのは難しい現実がありました。「これからも働き続けたい」と考えたIさんがたどり着いたのが、自宅で働くという選択肢でした。

未経験からの挑戦。PCスキルを武器に変える日々

在宅での仕事を探す中で出会ったのが、manabyの職業紹介サービス。さっそく登録して就職活動を始めるとまもなく、未経験から事務職に採用されました。

在宅で働くのも、事務の仕事も初めてだったIさん。チャットツールでのやりとりに戸惑いを感じながらも、「悔しいからこそやる」と覚悟を決めました。PCスキルを身に着けるためmanaby WORKSの「マナe」を契約し、eラーニングで本格的な学習をスタートします。

Wordから始め、Excel、PowerPoint、VBA入門、Excel上級にも挑戦。eラーニングは、動画で細かく説明されているのでわかりやすいと感じているそうです。最近ではMOS資格も取得し、朝に洗濯を干した後の2時間を学習の時間に充てています。

現在は週5日、履歴書や職務経歴書の作成業務を担当。在宅ワークだからこそ体への負担が少なく、自分のペースで無理なく続けられています。

支え合う家族と仲間。つながりが力になる

「頑張れるのは家族のおかげ」と語るIさん。体調を崩して思うように働けなくなってからも、家族は変わらず温かく支えてくれました。その存在が、今の原動力になっています。

職人として激務に明け暮れていた頃は、帰宅するのはいつも子どもたちが眠った後。幼い時期に十分に向き合えなかった分、今は成長した子どもたちと過ごす時間を大切にしています。弁当づくりや洗濯などの家事を担いながら、家族と仕事の話を交わし、日々の暮らしの中で支え合う関係を築いています。

「息子は、いまスーパーで働いています。私も長らく経験した業界だから、悩みに共感できる。だから、友達みたいに話を聴いています」

（娘が描いてくれた似顔絵）

将来的には、妻が取り組む在宅介護事業を支えるために、事務スキルをさらに磨きたいという夢もあります。

仕事や家事の傍ら、manaby WORKS利用者のオンラインイベントにも積極的に参加し、仲間への気配りも忘れないIさん。キャリアカウンセラーも「メンバーからの信頼も厚く、学びの場でも温かい存在です」と語ります。

働くことに悩む人へ。Iさんからのメッセージ

日々の努力が少しずつ実を結び、仕事にも自信がついてきたIさん。うまくいかなかったことは紙に書いて振り返り、二度と同じミスをしないように工夫を重ねています。

「やればできる。なんかはきっとできるはず。あきらめんと努力したら努力は報われる。『やったる！』という気持ちでやってみてほしい」と語る姿は、まさに“悔しさを力に変える”生き方そのもの。

透析患者になった、障害者になったと悲観するのではなく、とにかく何かをすること、動くことを心がけた、とIさんは言います。じっとしていると気持ちが落ち込んでしまうからと、無心で家族の弁当づくりに励んだ日々。その時間が悩みを忘れさせ、自然と前を向けるようになったそうです。

Iさんは、できることを探して前を向き、自分の道を切り拓き続けていました。

（2025年7月取材）