【導入企業ストーリー】半径10mからのSDGs しいたけ栽培+eラーニングで広がる世界

「株式会社Preferlink」は神奈川県小田原市を拠点に、障害者グループホームと就労継続支援B型事業所を運営しています。障害のある方が社会で活躍するための継続的な支援に取り組む企業です。

 

共生社会の実現を目指して

2014年に創業した同社は、障害者グループホーム「なないろホーム」を立ち上げ、障害のある方の自立を支援してきました。そして2022年8月に就労継続支援B型事業所「レインボーワークスタジオ」を開設。しいたけの栽培を通して、生産活動の機会を提供しています。

 

「B型作業所というと軽作業を中心に工賃を得る、というのが従来よくあるかたちですが、自然とのふれあいを生かした新しいやり方に挑戦してみたい、ということで創業者が注目したのが都市型農業だったんです」(株式会社Preferlink 佐藤さん)

 

昨年入社した佐藤さんは、同社福祉サービス部門の運営全般を担当。近隣施設や関係機関に同社の取り組みを伝えるリレーション活動を中心に担い、しいたけの販路開拓も行ってきました。

 

レインボーワークスタジオで育てたしいたけは、小田原市内にある「漁港の駅」や隣接する南足柄市にある「道の駅」に出荷するほか、飲食店への卸販売、その他商業施設への販売を計画中です。

 

SNSでは「もしキノコ生産者の私たちがキノコ専門レストランを開いたらどんな料理をだす!?」という想定で、スタッフの考案レシピを紹介するなど、アイデアあふれる取り組みを行っています。

 

強みを引き出す支援

レインボーワークスタジオの活動拠点は小田原市の街中のビニールハウス。温度管理がされた環境で菌床しいたけを育てています。

 

しいたけ栽培は出荷までの工程を細分化しやすく、障害雇用のポイントである仕事の切り出しがやりやすいのだと佐藤さんは栽培工程を説明してくれました。

 

例えば収穫から出荷までの工程でいえば

・真新しい菌床をハウス内の棚に並べる
・間引きをする
・収穫をする
・いしづきをとる
・おがくずを刷毛で掃う
・大きさ(規格)ごとに仕分ける
・パックに入れる/ラップする/袋に詰める

 

などに分けられ、利用者の得意なことややりたいこと、コンディションに合わせて作業を分担しているそうです。

 

「強みを引き出す支援がしたいと思っています。たくさんの工程から自分ができることや得意なことを見つけてほしいけど、それがしいたけ栽培で見つかる方もいるし、そうでない方もいる。そんなときに思い浮かんだのがmanabyのeラーニングでした」(佐藤さん)

 

しいたけ+eラーニングで広がる世界

佐藤さんは、以前就労移行支援事業所 manabyでサービス管理責任者を勤めており、このeラーニングのことを知っていました。一般的な通信教育は挫折したけど就労支援現場で生まれたmanabyのeラーニングなら続けられるという利用者たちを目にしてきた経験から、レインボーワークスタジオでも可能性を広げられるだろうと思ったそうです。

 

利用費用も1アカウント6000円程度と挑戦しやすい価格だったことも決め手となり、早速5アカウントから利用を開始。実際に導入してみると、いろいろな使い方ができることがわかりました。

 

「eラーニングがやりたいと入所した方もいるし、週半分はパソコン、もう半分はしいたけ栽培などとハイブリッドでやっている方もいます。しいたけの作業がちょっとマンネリ化して飽きてしまったとき、パソコンで気分を変えてみようと息継ぎみたいに使うこともあります」(佐藤さん)

 

eラーニングをきっかけに少しずつ通所を増やせれば、支援員や他の人たちとの接点が増える。そしてコミュニケーションをとることができると、よい方向に向かっていくことも多いのだと佐藤さんは言います。利用者が変わっていく様子を、佐藤さんは間近で感じていました。

 

事業所にくるまでひきこもり状態だった利用者のAさんは、週1回からしいたけ栽培での訓練を始めました。しいたけ栽培だけで通所を増やすことは難しそうでしたが、eラーニング訓練を半日だけやってみることを提案。いまでは週に3日通えるようになりました。

 

小児麻痺のBさんは支援学校卒業したあと障害者雇用で働きましたが、通勤がきつく退職。パソコンスキルを高めたいと事業所の利用を始め、現在は月2回通所するほか在宅でeラーニング訓練を行っています。

 

外出が苦手で孤独に過ごしていたBさんでしたが、いまでは訓練のある日は毎日支援員とオンラインで話し、月に一度は茶話会に参加してほかの利用者たちとコミュニケーションをとっています。「チームに所属している、社会とつながっている」と実感しながら、再就職に向けて希望を持てるようになっていました。

 

「コミュニケーションがとれるようになってくると笑顔が増えていくんですよ。eラーニングをきっかけに利用者の強みを引き出すことができるといいな、と思ってたけど、効果は想定の2倍。いい変化がみられるのはうれしいですね」(佐藤さん)

 

半径10mでできるSDGs

佐藤さんは、利用者と社会とのよりよいつながりを創ろうと、他にも様々なアイデアを考えていました。

 

例えば、運営するグループホームの共用リビングにパソコンをおいて気軽にeラーニングを体験できる環境をつくることで利用者の自立を促すこと、eラーニングを活用した在宅支援の可能性を模索しています。

 

また、もう一つは近隣農家との連携です。小田原市内は野山が多く、農業が盛んな地域。しかし高齢化による耕作放棄地も多く、今後も増加していくことが懸念されています。

 

「このあたりでも生産者たちが協力して荒れ地にならないように頑張って保存しています。例えば私たちが畑の草刈りを行う代わりに、その方が所有する野山の木々の葉っぱをいただけないかなと考えています。それをツマモノとしてうちの高等級のしいたけに添えて、商品価値を高めて販売できれば、それが工賃に反映できるわけです」

 

ボランティアではなく、ビジネスでみんなの問題を解決していきたいのだと、佐藤さんは続けました。

 

「SDGsというと地球規模で大そうな感じがしちゃうけど、まずは自分たちの周り半径10mくらいで、できることをやってみようと思っています」

 

人と人、そして社会をつなぐ“かけ橋”として奮闘する佐藤さんたちの挑戦は続きます。

(2023年4月取材)

 

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