福祉事業所でAIの仕事に携わる!SSS×manaby CREATORS

就労継続支援B型 manaby CREATORSで、OさんはAIの音声構成、音素ラベリングという仕事を担当しています。東北地方のキャラクター「ずんだもん」の音声を聞き、データとして入力する仕事です。

 

 

パソコンを使って働きたい!

Oさんはmanabyに通い始めて約1年が経ちました。現在は週5日manabyに通っており、音素ラベリングなどのデータ入力を中心に、主にパソコンを使って作業を行っています。

 

音素ラベリングとは、AIの音声構成に必要なデータを作成する作業のことで、サンプルとして声優が読み上げる音声を聞き、子音と母音の位置を特定していく仕事です。

 

例えば『こんにちは』という音声をスロー再生しながら、『こ』の子音『K』と母音『O』の始まる位置を確認して、そこに一つずつローマ字を入力していきます。

 

支援員が必要に応じてサポートを行いながら、利用者が分担して作業を進めます。

 

「慣れるまでは、音声を聞き分けるのは大変でした。でも自分には向いていると思います」(Oさん)

 

軽度知的障害のあるOさんは、学生時代にパソコンサークルに入ったことがきっかけで、パソコンを使った仕事に興味を持ったそうです。高校卒業後に就労移行支援を利用し、そこで進路の選択肢の一つとしてパソコンを使った作業を行う就労継続支援B型事業所のmanaby CREATORSを知りました。

 

「他の事業所でもパソコンを使って音楽の作成編集作業やデータ入力などの実習を行いましたが、manabyに決めたのは、事業所の雰囲気やスタッフのやさしさが決め手でした」(Oさん)

 

仙台発の新しい挑戦

この音素ラベリングの仕事をmanaby CREATORSに依頼しているのは、仙台の企業SSS合同会社です。

 

同社は、『東北ずん子・ずんだもん』などのキャラクター運営やライセンスビジネスを展開する企業です。10年以上も前からクラウドファンディングやSNSで話題となっており、様々な企業や団体が同社のキャラクターを活用して地域を盛り上げています。

 

仙台X-TECHイノベーションアワード2023では新事業・サービス創出部門 優秀賞を受賞し、AIを活用した事業への挑戦が注目を集めています。

 

今回、同社がAI音声合成の新たなサービスを開発するにあたって、データ作成のために膨大な作業が必要でした。

 

しかし、これまで依頼していたパートナー企業が都合により継続できなくなり、個人で請け負ってくれていた方も、兼業のため作業量に限界がありました。

 

そこでCEOの小田さんが考えたのが、福祉事業所と一緒にチャレンジしてみようということ。

 

「枠組みがしっかりしている作業なので、これならお願いしやすいだろうと考えました」(小田さん)

 

地元の事業所と挑戦したいと仙台市に相談して、紹介されたのが就労継続支援B型manaby CREATORSです。実際に依頼してみると、慣れれば十分に進めていけることがわかりました。

 

AI分野×福祉事業所の可能性

事業所では、まず支援員が作業内容を把握し、利用者の希望や得意なことを踏まえて作業の担当者を決めていきます。担当となった利用者は練習課題に取り組んだ上で、実際の作業を行います。

 

「作業工程がわかりやすく設定されているので、一人ひとりのペースに合わせて目標が立てやすい。本人にとって1日の過ごし方の見通しが立てられる機会になっているのがとてもいいですね」(manaby CREATORS 仙台 支援員)

 

Oさんをはじめ、担当するみなさんが根気強く取り組んでいることに感心している、と支援員は続けました。

 

発注者の小田さんも「少しは自分でもやっていたので、しんどい作業なのを知っている。とても助かっている」と言います。

 

作業は、仙台の事業所だけでなく近隣の名取、泉中央の利用者と複数名で分担をしています。manabyは複数の事業所を運営しているため、事業所が連携して協力して進めることができます。小田さんは、この体制にもメリットと可能性を感じていました。

 

小田さんは、読唇(口の動き)によって音声を自動生成すること、声帯を失ったひとのコミュニケーションにも使える技術の開発を目指しているそうです。

 

「いまはAI発展期で、開発のためのアノテーション作業は手が足りません。そのうちやらなくていい時代が来ると思いますが、まだ数年は人間の力が必要です。作業工程の枠組みが作りやすいので、B型事業所でもやりやすいはず。これからもいろいろな可能性を探りたい」(小田さん)

 

毎日コツコツ丁寧に

Oさんは、入所以来「自分の仕事を丁寧にやること」を目標にしてきました。最近では音素ラベリングの作業スピードが速くなってきたのを実感しています。

 

昼休みのおしゃべりでリフレッシュをしながら、毎日休まずに事業所に通い作業を続けています。これからは動画作成にも挑戦してnovalueに投稿したいと考えているそうです。

 

「もし働き方に悩んでいるなら、自分がやれること、やれないことを紙に書いて事業所の支援員と相談したらいい」(Oさん)

 

仙台で起ころうとしているイノベーション。Oさんはmanaby CREATORSで、AI分野の新しい挑戦を支える仕事に、コツコツと丁寧に取り組んでいました。

(2024年7月取材)