ひきこもり生活からの在宅就労

在宅勤務で広報チームのメンバーとして働くTさんは、障害者雇用で働く仲間のことを社内外に紹介する仕事をしています。

 

会社では70名ほどの障害者が働いており、全社的に事務作業などのサポートを請け負っています。Tさんはそんな仲間にインタビューをして記事をつくることに、やりがいを感じているそうです。

 

「社内報の記事をみて、声を掛けられるようになった。」

「取材を受けてよかった。」

と、仲間に感謝をされることが励みになります。

 

在宅で、チームで働く

Tさんは、もともと書くことがそれほど得意ではなく、文章をまとめるのはとても大変だと感じているそう。

「チーム内で助言をもらい、得意なことで助け合って進めています」

 

仕事は10時から17時まで、週5日の勤務です。チームごとにオンライン朝礼と終礼を行い、業務の報告をします。体調も安定しています。

 

在宅勤務では、コミュニケーションが文字のやり取りになることが多く、時々認識がずれてしまい、後になってお互いにずれていたことに気がつく、ということもあるそうです。なるべくこまめに報告や相談をするように心がけています。

 

仕事部屋には筋トレグッズを用意しているTさん。「やりたいと思ったらいつでもできる、という安心感があります」と笑います。

 

働こうと思えるまで

いまでは在宅勤務でやりがいを感じて活躍するTさんですが、manabyに通うまでは障害によって体調が安定せず、苦しい思いをされていました。

 

通勤が辛くなり前職を辞めてから、Tさんはしばらくひきこもりがちな毎日を過ごしていました。人混みにいると気分が悪くなり、人の視線や話し声が気になり落ち着かなくなってしまうため、外出をすることができなかったのです。

 

通っていた病院で、医師に紹介されたのが就労移行支援manabyでした。

「初めて電話したときも、体調が悪くて何度も事業所体験をキャンセルしたときも、スタッフが優しく受け止めてくれました。ここでチャレンジしてみようと思いました。」

 

manabyでは、HTMLなどのWeb系スキルを学びました。実は、働きたいからというよりは、周囲からのプレッシャーを感じて何か行動しなければ、と通い始めたのだと言います。

 

就労移行支援で学んだ一番大切なことは、生活のリズムづくりだとTさんは教えてくれました。体調が悪く、通えなくなることもありました。そんなときも支援員とじっくり話しながら、生活リズムを整え、徐々に働くことへ意識が向くようになったそうです。

 

世の中、思っていたほど厳しくない

就職活動については、本人よりも支援員のほうが焦っていたようです。何とかTさんに合う仕事が見つかるようにと願う支援員と一緒に、Tさんのペースで取り組みました。そしていまの職場に採用が決まったときには、誰よりも支援員が喜んだのでした。

 

働くことに悩む方へ「働くことに悩むのは普通。働かずに生きたいと思うかもしれない」とTさん。障害について言えずに苦しい思いをしているなら、全部でなくても明かせる範囲でいい、と考えます。

 

障害を知ることで、相手にも配慮できるし、配慮してもらえる。言わないとわからない。「世の中思っていたほど厳しくない。みんな、意外と優しかった」

 

Tさんは外出が苦手ですが、働くようになってから「今度はあのお店に行ってみよう」と少しずつ行動範囲を広げています。

 

(2020年4月取材)