【導入企業ストーリー】子供たちの未来の選択肢を増やす!弘前で始まった挑戦

青森県弘前市にある就労移行支援事業所「キャリアカレッジみらいと」は、2023年1月に開所しました。主にパソコンスキルを習得しながら、職場見学や職場体験を通じて「自分が望む働き方や生き方」に繋げていくことを目指しています。

 

 

障害者就労の現状

同事業所は、青森でキャリア支援を行う株式会社 I・M・S(以下IMS)と、NPO法人難病障がい児者を支えるみなの会(以下みなの会)が連携して立ち上げた事業所。みなの会 会長の山本さんにお話しを伺いました。

 

「私には障害のある子供がいて、いま小学6年生です。障害のある子が将来社会で自立していくために、働き方や生き方の選択肢を広げたいという思いから、IMSと一緒に立ち上げたのがこの『キャリアカレッジみらいと』です」

 

現在、弘前市近隣において障害のある方の働き方は多様だとは言えない現状があると山本さんは続けます。

 

就職先は、福祉的就労の就労継続支援A型、B型事業所など。週5日フルタイム勤務ということはなく、仕事もラベル貼りなどの軽作業や農作業が多いそうです。大企業で障害者雇用を行っているところもありますが、応募枠もそれほど多くはない現状だと言います。

 

弘前で在宅訓練、在宅ワークを目指す

障害のある方も、パソコンのスキルを身に着ければ在宅で働くという選択肢が広がると考えた山本さん。一方キャリア支援を行うIMSではITスキル研修を提供しており、地域でのニーズを感じていました。

 

「在宅ワークにつながるITスキルが学べて、さらに在宅訓練ができる就労移行支援があれば、幅広いニーズがあるだろうと思ったのです。そしてmanabyのeラーニングを知って、IMSの代表と仙台まで視察に行きました。開所してすぐに訓練ができる、いわばパッケージになっているのがよかったです」

 

早速eラーニング「マナe」を導入し、「みらいと」を開所。車でも電車でもアクセスしやすい場所で、明るく清潔感を大切に、学びやすい環境を作り上げました。開所すると、パソコンをやってみたいという問い合わせが続きました。近隣にもいくつか就労移行支援事業所がある中で、ITスキルを学べる点が利用の決め手となるケースが多いそうです。

 

ハローワークからの紹介で来所する方も増えました。就職が決まるまでの間、家にいるよりも事業所で一緒に就職先を見つけられたほうがいい、ということで訓練をしながら就職に向けた準備をしています。

 

5アカウントからスタートしていまでは20アカウントまで増やし、現在約20名が事業所で訓練に取り組んでいます。学んでみた結果、やっぱりパソコンは苦手ということがわかった方もいますが、それも自分を理解するために必要な学びとなり、働き方を考えるきっかけになっているようです。

 

「それは何のためにやるのか」

事業所ではeラーニングによる訓練のほかに、IMSのキャリアコンサルタントによるレクリエーションを毎週行っています。

 

「毎日単純にスキルを学ぶだけでは、不安になってしまう方もいます。やみくもに勉強するのではなく、やりながら『それは何のためにやるのか』を伝えて、動機付けを行うのも大事ですよね」

 

例えば、WordやExcelを学んでそれを仕事にどう生かしていくのか、何のためにスキルを学ぶのか、いま学ぶことが何につながるのかを丁寧に伝えながら、職種ごとに実際の仕事内容を紹介して働き方をイメージしやすいようにサポートしています。

 

利用者には就職を急いで焦ってしまう方も少なくありません。事業所では就職までのステップを丁寧に説明し、いまやるべきことやできることに集中してもらえるようにと一人ひとりに伴走していました。

 

 

みらいとでは、訓練の一環として、実際の地元企業の商品ラベルのデザインを利用者が担当。企業との連携で多様な職場実習を提供している

子供たちの未来のために

「障害のある子供たちの進路で言うと、特別支援学校を卒業したら工賃をもらえる就労継続支援などでの福祉的就労を選ぶことが多いです。でも仕事内容も限られていて一般就労に結びつきにくい現状もある。卒業後に一般就労をした場合も長く働くことができずに辞めてしまう、という問題もあります」

 

卒業後の進路として就労移行支援を選ぶことが浸透し、そこで就職前にスキルを身に着けて自分に合う仕事に就くことができるようになれば、と山本さんは続けました。

 

事業所を立ち上げてから半年、山本さんは社会や地域の意識が少しずつ変化してきていることを感じていました。リスキリングや学び直しなど、障害の有無に関わらず仕事に向けた学びの大切さが注目される中で、就労移行支援の役割も大きくなるだろうと山本さんは考えています。

 

またみらいとでは本格的な在宅訓練も始まります。「前例がない」ということで、精神障害の方が在宅訓練を認めてもらうのは簡単ではありませんが、自治体と連携しながら道を切り開いている最中です。

 

「地方だと特に、僻地で公共交通がなくて事業所に通えない方もいる。様々な理由で家に籠らざるを得ない方もいる。そういうところに必要な支援を届けて、在宅で働くことにつながったらいいですね」

 

就労訓練だけでなく、山本さんは地元企業との橋渡しにも力を入れています。一人ひとりの利用者と向き合いながら、知り合いの企業の課題と照らして必要なポジションを見つけ出しマッチング。簡単ではない取り組みですが、地道に一つひとつ積み上げていました。

 

「みらいと」という名前には、「それぞれの想いで明るい未来を共に築いていこう!」という気持ちが込められているそう。青森・弘前の「みらいと」から、地域を巻き込んで未来を創る大きな挑戦が始まっていました。
(2023年5月取材)

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