知的障害のあるNさんは、初めての就職を目指して様々な職場実習にチャレンジしています。
Nさんが就労移行支援manabyで訓練を始めたのは、約1年前のこと。高校を卒業後、自立訓練事業所に2年間通ったのちにたどり着いたのがmanabyでした。
事業所を見学し体験利用をしてみたときに、支援員と利用者の距離感がいいとNさんは感じたそうです。
「事業所では一人ひとりやっていることは違うけど、スタッフが一人ひとりに寄り添っている感じがよかったです。『うまく生きるのではなく、らしく生きるための学びを』という想いもいいなと思いました。」(Nさん)
パソコン訓練のほかにも軽作業を体験し、職場実習ができることも聞き「ここでやってみたい」とmanabyに通うことを決めました。
manabyでは、eラーニングでWordやExcelなどの事務スキルを学んだほか、生活や就職に関するオンラインのライブ講座にも参加しました。最近は、タイピング練習やビジネス文書作成などの実践的な訓練を行っています。
最初は初めての場所で何をするのだろうという不安もあったけど、徐々に支援員とも打ち解けることができて、通所するたびに楽しいと思えるようになった、とNさんは振り返りました。
支援員もNさんの変化を感じていました。
「とても素直にひたむきに努力を続けられるところがNさんのすごいところ。これまでは、自ら発信しなくても周囲が助けてくれる環境にいたと思いますが、就労に向けた訓練の中で、自分から質問したり、声を上げるということが確実にできるようになってきています。本当にすごいですね」(支援員)
事業所の支援員たちは、Nさんに様々な体験を通して働き方の選択肢を広げてほしいと、地域資源を見渡しながら地域の方々と連携をして、軽作業体験や職場実習の場を用意してきました。
その一つが「THE ENGLISH EDUCATION JAPAN」での職場実習でした。
THE ENGLISH EDUCATION JAPANは、相模原市にある英会話スクールです。子供から大人までのクラスがあり、テキストを使わないスタイルで英会話を体験することができるのが特徴です。
manabyの支援員は、相模原青年会議所と相模原市障害者就業・生活支援センターが主催するイベントで、同スクールを経営するAkiraさんと初めてお会いしました。そして今回の実習について相談したところ、ご快諾いただいたのでした。
同スクールでは、障害者手帳を持つスタッフもクラス運営を支える一人として働いており、以前にも障害者の職場実習の受け入れを行ったことがあるそうです。
「まずはやってみて、その方が活躍して働ける環境を一緒に探してあげられるといいですよね」(Akiraさん)
現場運営だけでなく事務作業やクラス準備など、スクールの業務は多岐にわたります。Akiraさんはスタッフとの対話を通して、適所で働けるようにサポートしていました。
誰でも属性など関係なく働ける社会であってほしいというAkiraさん。幼少期の頃から障害のある子と一緒に過ごし、周囲の決めつけや差別などに疑問を感じていたそうです。成長過程で分断されていく社会を目の当たりにして、悲しいと感じた思いが今でも頭の片隅にあるのだと続けました。
そして今、みんな違うからこそ『化学反応』が起こるはずであるという想いで、一人ひとりの特性に注目して学びや成長の場を提供しています。
「スタッフも生徒もみんなで切磋琢磨しながら、一緒に成長していけると思うんです」(Akiraさん)
今回Nさんが参加したのは「こどもアート英会話」の教室です。Akiraさんは、Nさんが子供たちと触れ合う様子を見守りながら、適宜声掛けを行いました。
「初めての場所で緊張していたかもしれませんが、メモをとりながら懸命に取り組んでいました。子供たちと一緒に色を塗るうちに、リラックスした表情も見られましたね。心が動いているようでした」(Akiraさん)
Nさんは自分らしい働き方の実現に向けて経験をまた一つ積み重ねることができたようです。
「普段は子供たちの楽しそうな姿を間近で観ることがないので、とても心が躍りました。スタッフが子供たちと楽しそうに全力で向き合っているところがすごいなと思いました」(Nさん)
実習を終えてNさんはそう語ります。そして、最初にスクール見学をしたときにAkiraさん自身が子供たちと心から楽しく話をしている姿、泣いてしまった子を連れだしてサポートをしている姿をみて、「素敵だな」と思ったことも教えてくれました。
Nさんは、他にも様々な職場実習を体験しながら自分が興味のあること、やってみたいことを探している最中です。
支援員は、Nさんに寄り添い働き方の選択肢を一緒に見つめて、次の職場実習をコーディネートしています。
Akiraさんは、子供たちが学ぶためのツールづくりの作業もあるから、次回はそんな実習の場をつくることができるかもしれないと考えていました。
Nさんの周囲には未来を一緒に考えるたくさんの専門家たちがいて、地域でつながり連携し「らしく生きるため」の学びや可能性を広げようと挑戦する姿がありました。
職場実習協力:THE EDUCATION TEAM JAPAN
(2024年2月取材)