Rさんは、いまの会社に障害者雇用で就職して1年が経ちました。広報チームに所属しており、広報誌の編集・デザインを担当しています。
Rさんは、主にWordを使って編集作業をしています。イラスト素材を活用して誌面をデザインするほか、社員から公募した原稿の添削や、自ら執筆を担当することもあります。
「業務はマルチタスクで多岐にわたりますが、一つひとつの作業が終わるとスッキリしますね。やりがいを感じる瞬間のひとつです」
チームメンバーは全員障害者雇用の在宅勤務スタッフです。チャットツールで朝の挨拶をしてからビデオ通話なども交えてオンラインでやりとりをしながら仕事を進めます。
家で仕事をすることのメリットは、オフィスと違い一人で静かに集中できることですが、その分時間が経つのを忘れて没頭してしまうことも。アラームを活用しながら休憩をとり、体に負担がかかり過ぎないように工夫しています。
Rさんは、幼稚園のときから「みんなと違うな」と理解していました。小学校ではその違いからいじめられることもありましたが、「自分の個性だ」と思っていたので特に悩むことなく過ごすことができたのだそうです。
「嫌な思いをしたときなどは、友達や母が慰めてくれたり、応援してくれたりしました。前向きでいられたのはそのおかげですね」
中学高校は、車椅子で養護学校に通いました。穏やかな学生時代を過ごし、高校卒業を控えたころになると「働き方」を考えるようになりました。デザインや絵が好きだったので、それを活かせる仕事がしたいなとぼんやり考えていたRさん。進路の先生からいくつか作業所を勧められ見学に行きました。
その中でお菓子のラベルをつくる仕事を知り「自分にもできるかもしれない、デザインをしてみたい」と思い、卒業後はお菓子づくりを行う作業所型の地域活動支援センターに通うことを決めました。
作業所では販売用のチラシやPOPを担当。PowerPointやWordを活用してデザインをし、その対価としてお金をいただくという経験は、やりがいや責任感を感じるものでした。
仕事に慣れてきた頃、一緒に暮らしていた祖父母が亡くなり、母と二人暮らしとなりました。母一人で生活を支えることとなり、大変そうな姿をみて「自分も就職をして助けになれたらいいな」と思い、Rさんは作業所のスタッフに相談します。
そこでいくつか就労移行支援事業所の資料をもらい、そのうちの一つにmanabyのリーフレットがありました。Rさんは在宅での仕事に就きたいと思っていたので、manabyのeラーニング、在宅支援に興味を持って見学へ。
これまで作業所では送迎サービスがあったので自宅から通えていたけど、就職してオフィスまで自分で通勤するのは難しいと考えたRさん。自宅で在宅ワークを目指して勉強ができるmanabyに通うことを決めました。
「でも決め手は『マナビーくん』です。かわいくて、ひとめぼれだったんですよ」
Rさんは在宅で訓練を開始して、Word、Excel、PowerPointのほかGoogleツールも学びました。デザインの勉強にとillustratorの講座も受講。事業所で行うデザイン研究のレクリエーションにも参加し、作品の発表も行いました。
在宅ワークのイメージをつかもうと、チャットを用いた連絡やオンラインでの面談なども積極的に取り組んだRさん。初めての就職活動では障害者雇用のために必要な書類の準備や企業研究など、わからないことだらけで大変でしたが、支援員に相談しながら二人三脚で進めました。
在宅勤務の求人はたくさんありましたが、職種や身体障害にとって必要な配慮がマッチしないことも多かったとRさんは言います。
「例えば休憩時間が固定されていると、早く動くことができない私にとっては難しいこともあります」
manabyでの訓練は、自分に向き合い自分の体について理解するいい機会になった、とRさんは振り返ります。そして企業研究と就職活動を経て、いまの会社とマッチして就職が決まったのでした。
Rさんの就職活動を程よい距離感でずっと応援してくれた母からは「いいところが見つかってよかった、自立の道が見つかってよかった」と声をかけられたそうです。
働く母とは、これまでも普段から自然と仕事の話をしており「働くってこういうこと」を教えてもらったというRさん。いまでは、Rさんが仕事で大変だったことやうまくいって褒められたことを話したり、おつかれさまと労い合ったりしています。
manabyで過ごした1年は、居心地がよく快適な時間だったというRさん。
「事業所の支援員はみんなフレンドリーでアットホームに接してくれました。親身になっていっぱい聞いてくれるから悩んでいることがあっても相談しやすかったです」
1年前はわからないことがいっぱいで、就職に対してもぼんやりとしたイメージしかなく最初は不安だったと続けます。
「就職しようと動きだすこと自体、勇気がいることですよね。最初の一歩を踏み出してがんばろうと思えるだけでスゴイこと。目標があるなんて素晴らしいと思います。いま働きたいと思っている方には、その気持ちに自信を持って頑張ってほしいです」
不安でいっぱいだったRさんは、自分の心身と向き合い、自分を活かして、幼い頃から好きだったデザインに関わる仕事を続けています。
(2024年4月取材)