事務職でもプログラミングスキルで貢献!ADHDの自分を分析して

18歳で一人暮らしを始めてから、坂道を転がるように調子を崩してしまったNさん。ひきこもりがちだった時期もありましたが、今ではプログラミングスキルで職場の困りごとを解決しています。

 

得意を生かして

福島県郡山市に暮らすNさんは、フルタイムの障害者雇用として週5日シフト制で働いています。バックオフィスチームに所属の事務職として入社して2年が経ちました。

 

社内の備品管理を担当し、GoogleスプレットシートやGoogleフォームを駆使して発注業務の効率を改善。それからいろいろな部署からの発注・手配・集計業務をサポートするようになり、現在は従業員の健康診断や福利厚生の手配を任されています。

 

得意のプログラミングスキルを生かして社内を縦横無尽に行き来して活躍するNさんですが、大学時代はコミュニケーションに苦手意識を持っており、ひきこもりがちに過ごしていたと言います。

 

「大学生の頃は、社会に出るのが怖かったですね。人づきあいが苦手だったので会社に所属してやっていけるか不安だった。でもmanabyに通って、レクに参加して支援員と関わるうちに少しずつ話せるようになりました」

 

最初の頃は自分の意見を伝えるのが難しかったけれど、他の利用者も似たような気持ちで臨んでいるのだろうと思うと、緊張せずに頑張れたのだと言います。

 

manabyに通い、支援員や利用者との交流を通して少しずつコミュニケーションに慣れ、面接練習にも丁寧に取り組んだNさん。自己分析にも注力して、自分の得意不得意を把握しました。

 

職場では苦手な電話対応について配慮を受けながら、不安を感じずにスムーズに業務に集中することができています。

 

一人暮らしでわかった生活の難しさ

Nさんは、大学入学を機に一人暮らしを始めました。新しい生活に戸惑いながらも、必死に勉強にアルバイトにと励みましたが、徐々に日々の生活が難しくなっていきます。

 

「朝が苦手で起きられず、授業中は集中力が続かずに寝てしまう。部屋も散らかって、日常生活がままならない。とうとう一人では手に負えなくなってしまいました」

 

どうにかしたいと考えて、いろいろ調べていくと「ADHD」の症状が当てはまるのではないかと疑うようになりました。休学をして実家に戻ったNさんは、自分で大きな病院での検査を予約して待つこと3か月。実際にADHDと診断をされて「やっぱりなあ」と思ったそうです。

 

診断の際に、小学生時代の通知表を確認したNさんは「落ち着きがない」というコメントを目にしました。思い返してみると、子どもの頃から朝が苦手で片付けが苦手。中学に入ってからは、不注意、忘れ物で注意されることも増えました。強い眠気に襲われて気絶するように寝てしまうこともありました。

 

それでもNさんは勉強が苦手なわけではなく、成績もよかったためか、大きな問題になることはありませんでした。

 

一人暮らしをして初めて、自分ではどうにもできずに行き詰まってしまったNさん。診断を受けて、何とか日常生活を立て直して両親の期待に応えようと復学をしましたが、しばらくすると同じような状態になってしまい、中退を決めました。

 

それからNさんは就職を目指して、単身郡山市へ。ハローワークで職業訓練に通い、興味のあったWebデザインを半年間学びましたが、当時はそのスキルを生かせる仕事がなかったため、紹介された塾講師のアルバイトを2年続けました。そしていよいよちゃんと就職したいと思い、調べるうちに就労移行支援のことを知りました。

 

やりたい仕事は何だろう

元々プログラミングに興味があり、趣味でHTMLやCSSを触っていたNさん。プログラミングスキルを学べるmanabyが気になりました。

 

「事務系スキルはどの事業所でもだいたい学べるけど、プログラミングまで学べるのは珍しかった。改めて一からやりなおしてみたいと思いました」

 

通い始めると、事務系スキルからプログラミングスキル、デザインスキル学習にも取り組みました。それからポートフォリオの制作を行いました。

 

そして、支援員のサポートを受けながら生活を整えることにも力を入れました。部屋の片づけは、仕組み化することに挑戦。曜日や時間を決めて定期的に掃除を行えるように計画をしていきます。朝ちゃんと起きられるように就寝時間の管理も徹底しました。

 

それから自分がどんなことをやりたいのか、どんな働き方がしたいのかを考えたNさん。manabyに通う前は、障害については明かさずに働く「一般就労」を目指していましたが、いろいろな選択肢があることを知りました。

 

就職活動を始めてから、まもなく挑戦したのが今の会社です。

 

「見学に行くと職場の雰囲気がよく、丁寧に説明してくれたのが印象的に残っています。まだ就職活動を始めたばかりでしたが、ここで働いてみようと思えました」

 

自分を知り、自分らしく働く

プログラミング系の仕事をしてみたいと考えていたNさんでしたが、入社を決めたのは事務職の仕事でした。

 

「就職活動をしてみると、IT職での求人はなかなかありませんでした。まずは社会復帰したうえで、のちのち目指そうと思った。でもいま、事務職でもプログラミングのスキルが役に立っています」

 

入社後、プログラミングスキルを学んできたことを伝えると、職場のいろいろな困りごとを相談されたそうです。

 

「表をもっと使いやすくしたい」
「スプレッドシートを自動化できないかな」

 

これまで学んできたことが、思いがけない場面で役に立つシーンがあることを体感しました。

 

Nさんは自身の就職活動を振り返り「自己分析は本当に大事だとわかった」と言います。それがわからないままでは「当たって砕けろ」の就職活動になりがちだけど、就労移行支援では支援員と一緒にそこに向き合うことができるのがメリットだと考えていました。

 

さらに「自分ひとりで進める仕事はない」とNさん。事業所では、仲間と共同で取り組む機会や環境があるので、それを十分に生かして訓練をしてみてほしいと続けました。

 

「今、働いていて楽しいです」

 

プログラミングで業務効率化に貢献するNさん。今後は、業務上扱うことが多いデータベースの知識を増やしていきたいと意気込みます。
(2024年9月取材)

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