がんになった整備士が目指す、新たな自分らしい働き方。

Kさんは、自動車ディーラーで整備士としてキャリアを積んでいました。新車を扱う仕事はやりがいがあり、体を動かす毎日はとても充実したものでした。

 

闘病、そして模索したこれからのこと

血液のがんである悪性リンパ腫を罹患してから、そんな毎日が一変します。仕事は休職し、検査と治療の日々。それから骨髄バンクでドナーが見つかり、骨髄移植手術を受けました。

退院してからも闘いは終わりません。長期間の治療で体力は低下し、定期的に通院をして薬を飲み続ける生活となり、Kさんは長年続けた整備士の仕事を辞める決断をしました。

 

「これからは体力的にも長く続けられる仕事をしたい」と考えたKさん。通院しながらハローワークの職業訓練に通ったりして、これからの働き方を模索しました。

 

そんな中、病院の看護師に紹介されたのが、manabyの就労移行支援でした。
しかしKさんは、自身が障害福祉サービスである就労移行支援の対象とならないことを知りました。そして、誰でも利用できるmanaby WORKSを紹介されたのです。

 

「このサービスなら就労移行支援と同じeラーニングを利用して自宅でも動画でパソコンスキルを学べるし、キャリアカウンセラーに相談もできるので、利用してみようと思いました」

 

大人の学びの場 manaby WORKS

当時manaby WORKSは、Kさんのように障害福祉サービスの対象外になってしまう方や遠方で事業所に通えない方にも学びを届けたいと、サービスを開始したばかりでした。

 

これまで整備士一筋で「パソコンは動画を見るくらいだった」というKさんは、初めて本格的にWord、Excelを学び始めました。退院後も2か月に一度通院をしており、体調が優れない時もあります。学びのペースを自分で調整をしながら、丸2年学び続けてきました。

 

「パソコンを学んでいる自分、いいなと思う」とKさんは笑います。
動画を見るだけでなく、問題集を自分で用意して繰り返し実践しながら、習得しようと努力しています。

 

学びながら 働きながら

そんなKさんですが、約1年前にパートタイムの仕事を始めました。ゆくゆくは事務の仕事に就きたいと思っていますが、まずは体力をつけるためのステップとして、病院の厨房で働くことにしたのです。週に5日、1日5時間、仕事の内容は、食材の仕込みや洗い物、ワゴンを下げることなど。最初のころは、帰ると疲れ果てて学ぶどころではなかったようですが、徐々に学びとの両立もできるようになりました。体力の向上につながっています。

 

まだ体調には波があり、調子を崩してしまうことも。辞めようと思ったこともあったそうですが「続けられる方法を一緒に探してみましょう」と言ってもらえる理解のある職場で、働くペースを落とすことで続けることができました。体力がつくまで、できる限り続けたい、とKさんは思っています。

 

その日に向けて

manaby WORKSにはコワーキングスペースがあり、利用者は自由に使うことができます。

 

「ここに通っているというと、驚かれます。どんなところなのか、と(笑)。パソコン教室ではないし、福祉サービスでもない。学んだり、本を読んだり、ご飯を食べたり、自由な場所。」

“馬の合う”友人もできました。年齢も様々ですが、顔を合わせるうちに話をするようになり、今では一緒に遊びに行ったり、飲み会をしたりしているそう。

 

Kさんは、パソコンを使った仕事、事務などのデスクワークを目指しています。

 

「その日に向けて準備すること。やってみたらいい、やってみたら面白いことがある」

 

同じような境遇で悩む方がいたら、そう伝えたいと教えてくれました。

Kさんは闘病と仕事と学びを両立させて、その日に向けて準備を重ねています。

 

(2020年7月取材)