50代でもあきらめない!パソコン未経験から学校事務へ

Dさんが 筋強直性ジストロフィー だと診断されたのは、50代になってから。遺伝性の病気でした。

 

家族を支えた30年

高校卒業後、営業事務として働きだしたDさん。結婚を機に退職し、家事や育児を担う傍ら、販売や清掃など様々な仕事をして家族を支えてきました。

 

Dさんの娘さんが中学生の頃、怪我をして接骨院に連れて行ったときのこと。足の異常を指摘され、大きい病院で診てもらったほうがいいと勧められました。筋肉の病気、筋強直性ジストロフィーという病気でした。

 

「この子が歩けなくなったら私が世話をしなければ、と思っていました。まさか自分も同じ病気にかかっているとは」

 

思い起こせば、若い頃から手の指のこわばりを感じることがありましたが、通院をすることなく、仕事や子育てに専念しました。それから数十年、年齢を重ねて捻挫しやすくなったなと感じていたDさん。娘さんの定期受診に同行したときに、自身も同じ病気を発症していることを知りました。

 

新しい働き方に挑戦するために

当時Dさんは清掃の仕事をしていましたが、足が動かしづらくなってきたこともあり、将来を見据えて病気のことを上司に打ち明けて相談しました。しかし、コロナ禍に会社が閉鎖することが決定、退職することに。

 

症状はこれからもっと強くなっていく。手に職もないし、これからどうやって働こう。次の働き方をあれこれ考えて、Dさんは「パソコンができないと働けないかもしれない」と感じたと言います。娘さんがスマホで調べてくれた就労移行支援manabyに見学に行ってみることにしました。

 

「PowerPointの作品を見せてもらって『パソコンができればこんなことができるんだ』と驚きましたね。私もやってみたいって思いました」

 

manabyに通い始めてから初めてパソコンの基本的な操作を学び、eラーニングでExcelやWordのコンテンツを繰り返し視聴しました。瞬く間にパソコンの楽しさにはまり、自宅でも復習したいとパソコンを購入。わからないことだらけでしたが、支援員の力も借りながらなんとか設定をして、事業所でも自宅でも前のめりで学び進めました。

 

新しいことを学ぶことはとても楽しく、充実した訓練時間を過ごしました。PowerPointで趣味のフィギュアスケートについてスライドをまとめて、みんなの前でプレゼンをしたのもいい思い出です。

 

就職に向けて支援員と相談する中でDさんは障害者手帳を取得することを決め、障害者雇用での就職を目指しました。そして就職活動を経て、障害者枠で就職を果たしました。

 

合理的配慮の大切さ

初めての障害者雇用。初めてパソコンを使った事務のお仕事。Dさんにとっては初めて尽くしで慣れないことばかりでしたが、年齢だけで見てベテラン事務員だと勘違いされてしまうことが大きな悩みとなりました。

 

忙しい職場で毎日が時間との戦い。「こんなこともできないの」ときつく当たられることもあり、徐々にストレスから胸に痛みを感じるようになっていきました。

 

何とか頑張りたい気持ちがありましたが、就職して1か月、とうとう体が限界を越えてしまいます。たこつぼ型心筋症を発症し、入院することになりました。残念ながらDさんにとって、そこは安心して働き続けることができる職場ではありませんでした。

 

「manabyの支援員に、ダメ元でもう一度就職活動をやり直したいと相談したら『大丈夫、一緒にまた頑張ろう』と言ってくれたんです」

 

支援員は役所に確認をして、再度就労移行支援の利用手続きをサポートしました。

 

何歳からでもリスタート

manabyに戻ったDさんは、また支援員と一緒に就職活動を行いました。コロナ禍なので近場の職場がよさそうだとか、ここの職場環境はどうかなど、支援員はあれこれとDさんに提案。就労移行支援を使用できる残期間が少ないこともあり、就職活動のペースの速さに息切れすることもありました。数十社応募しましたが、年齢の壁を感じることも少なくありませんでした。

 

「落ちて落ちて落ちまくった(笑)」

Dさんはそう笑いますが、当時は落ち込んで感情を抑えられずに事業所で泣くこともありました。そんなときも支援員はすぐそばで話を聞き、励ましてくれたのだと振り返ります。

 

趣味の話や家で言えないことなどもたくさん話しました。時に冗談を言い、落ち込んだときはそっと見守り、歩幅を合わせてくれた支援員に感謝していると言います。就職のために「パソコンを習うため」に来たmanabyは、いつしか「心が和らぐ場所」、「落ち着く居場所」になっていました。

 

たくさん笑って泣いた紆余曲折の就職活動の末、Dさんは小学校の事務職員としてリスタートすることが決まりました。校長もDさんの病気のことを気にかけてくれています。迷惑をかけないように頑張ろう、できるだけ長く続けられたらいいな、とDさんは働く準備をしています。

 

「年齢であきらめずに頑張って!私もmanabyに来た時に、頑張ればあなただってできる!って声をかけてもらった。自分が頑張れば、周りも一緒に頑張ってくれる。一人じゃない、大丈夫!」

 

パソコン初心者だったDさんは、いまでは事務ソフトやチャットツールを使いこなして、コミュニケーションの幅も広がりました。新しい職場で、毎日子供たちの笑顔を見られることを楽しみにしています。

(2022年11月取材)

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